◆「まあまあ」は愚か者の安心である
その視点で自社の物づくりを見ると、問題の多さに愕然とせざるを得なかった。特に在庫の多さがひどい、生産量の見込み生産で、受注生産は一割しかなかった。しかも在庫から順次納品できていない。お客様の千差万別の注文に応じて在庫品を組み替えたり、改造して納品したりする二度手間になっていた。
トヨタ流の「在庫は罪悪」「売れるものだけをつくる」への転換なしには、競争力の回復は不可能だった。
E社はトヨタ生産方式をベースとする生産改革に着手した。その結果、現在では生産量の八割が受注生産になっている。二割はまだ見込み生産だが、在庫として抱えても確実に売れるものに限られている。これにより、在庫量は最悪期の四分の一にまで減り、キャッシュフローも大きく改善されつつある。
まだまだ改革途中であり、リードタイム(商品の受注から納品までの期間)の短縮など課題はおおいが、少なくとも国内の同業他社との差別化は可能になった。ベンチマーキングの対象とした企業と比べても、いくつかの項目で近いレベルまで来ている。
この生産改革は、E社に多くの教訓を残してくれた。
社内に目が向き、国内の同業他社だけを意識していたときには、そこそこの改善をしていればよかった。ところが、ベンチマーキングで世界に目を向けると、その程度ではどうにもならない。コストハーフであるとか、五分の三カットといった大胆な改善なしには戦えない。目標が高いだけに、生産部門だけではなく、開発、設計、調達部門も巻き込んだ全社一丸、一気通貫の改善が不可欠となる。この取り組みが会社の風土さえ変えていく力になった、というのが管理職氏の感想だ。
歩みは一歩ずつ着実でかまわないが、目標は高く掲げる。「とても出来ない」と可能性を閉ざさない事だ。目線を高くすることで初めて見えてくるものは多い。
自分を変えるのは「不可能なほどの大目標」
ノート
□目標が高くなると視点が高くなる
□視点が高いと大局が見えてくる →一流人「最善」を目指す、二流人が「中庸」を求め
□「最高峰」をベンチマーキングしよう
ベンチマークのスケジュール
目標の設定
↓
ベンチマークの設定
↓
比較検討
↓
理想を描く
↓
理想達成のステップ画
↓
実行ーーーーー→評価
↓これを何回も繰り返す
↓
目標達成
↓
新たな目標を設定する
ベンチマークの対象は規模を問わない
トヨタは売上規模で60倍もの差がある当時からGMを目標とした。
部品一点一点まで原価を比較、GMに負けているものを「無駄遣い」
として、日々改善に努めた。一円、二円と無駄遣いを減らし、
やがて目標を達成できた。