万能スピーチ術教えます
「諸君は今後、スピーチをする機会が多い。突然指名されることもあるだろう。そうしたときに困らぬよう、どんな場合でもスピーチできる方法を伝授する」。30年前、大蔵省に入省したとき、われわれ新入生を前にして、ある先輩がこのように訓示した。
その方法は簡単至極で「世の中は、縦糸と横糸でできています」と話し始めるのである。例えば税務署長として納税者大会で行うスピーチから、「税金もそうです。表向きの「税制」という縦糸と、実際面の「納税」という横糸がある」というようにやる。そして、「どちらも重要です。そして、この二つがバラバラにならず、互いに補うようにしなければなりません。」と続けてゆくのだ。
「どんな場合でもこれで対処できるから、慌てる必要はない」と、この先輩は言った。(A)、「これは、かのゲーテも言っていることです」と付け加えれば、もっとよいだろうと言った。
これはまったく巧みな方法である。まさに万能スピーチ術だ。やってみるとすぐわかるが大抵のことは「縦糸と横糸」で扱えるのである。結婚式でも卒業式でも入社式でも、すべて9あなたがたの将来は、縦糸と横糸」だ。そのたとえに多少無理があっても、聞いているうちに聴衆はなるほどと納得する(「糸」というところが(B)なのである。単に「縦と横」または「二次元」と言ったのでは、抽象的でイメージがわかない)。
また、一見陳腐な内容でも、「もともとはゲーテの言葉か」ということになれば、人々は注意して聞く。勿論、多くの場合、出まかせをゲーテの責任にしてしまうわけだが、「ゲーテが言っていない」と証明するのは困難だから、ばれる心配はない。文学に詳しい人がいる席なら、「ケインズも言うように」とやればよいだろう。経済学者も混じっている場合は、「シュールレアリズムの詩人モーとレアモンの言葉を借りますと」と、あまり知られていない人を引用する。(要するに、(C)「虎の威を借りる」のである。)
ここで重要なのは、「どんなときでも話せる」と言う自信である。自信があれば、落ち着いていられる。落ち着いていれば、アイディアは出てくる。何を「縦と横」にするか(D)思い浮かばなくても、話しているうちに何か思いつくだろう。
「ゲーテ」 ドイツの詩人:作家
「ケインズ」イギリスの経済学者
16:(A)に入る言葉はどれですか。
1、いわば
2、ただし
3、さらに
4、結局
17、(B)に入る言葉はどれですか。
1、ミソ
2、タネ
3、バツ
4、オチ
18、この本文の内容からすると(C)虎の威を借りるのはだれですか。
1、スピーチを聞く人
2、スピーチをする人
3、ゲーテやケインズ
4、あまり知られていないひと
19(D)に入る言葉はどれですか
1、突然
2、とっさに
3、きゅうきょ
4、いっせいに
20、「満濃スピーチ術」のやり方として、筆者の説明とあわないものはどれですか
1、スピーチの内容を縦糸と横糸に結び付けて話すこと
2、縦糸と横糸のたとえがちょっと不自然でもそんなに気にしないこと
3、あらかじめ縦糸と横糸のたとえを準備して、自信を持って話すこと
4、たいていの場合、「テー手の言葉をかりますと」というと効果的であること