晴明の両親と出生の謎
安倍 晴明。彼は、いつ生まれたのか。両親は誰なのか。どこで生まれたのかすらも、まったくわかっていない。それにまつわるいろいろな書物や言い伝えは日本のあちこちが残っている。大阪、讃岐、茨城とたくさんある中で一番身近な大阪説をとりあげてみよう。
ここでは、父を安倍 保名。母を葛の葉と仮定して話を進めていくことにする。大阪の安倍晴明神社に伝わる話はこうだ。
いまから千年以上昔、阿倍野に安倍保名という男が住んでいました。
あるとき、保名は友人と和泉の信田明神にお参りした帰りに、近くの信田の森へ行くと狩で追われた白狐が逃げてきてこれを、かくまってあげました。
その後、白狐は女の人になって保名のところへ来ます。名前は「葛の葉」と名乗りました。
ふたりは結婚して阿倍神社の近くに住み、やがて子供が生まれ、安倍童子(晴明の幼名)と名づけました。
泉州信田森葛葉神社にも同じような話が伝わっている。この話によると晴明の母は「白狐」ということになる。葛の葉という狐は人間になって晴明を生んだ。伝説によると、彼女は狐の姿を晴明に見られてしまう。晴明はそれをとても怖がったので、仕方なく森に帰ったらしい。もし、本当に母が狐なのだとしたら、晴明の神秘的な力にも説明がつく。もともと、狐は霊力の高い動物で神として祭りあげられている。その子供なら高い霊力を持って生まれてきてもおかしくはない。というか、常識的に考えるとありえない話なのだが。でも、怨念で人を呪うことができた時代。こういうことが本当にあったのかもしれない。果たして実際の所は一体どうなっているのだろうか。