「啼かぬなら~ ホニャララしよう ホトトギス」の歌でも比較される、信長・秀吉・家康の三武将。日本史に君臨する人々だけあって、戒名もゴリッパ。どなた様も最長記録クラスです。
●織田信長:惣見院殿贈大相国一品泰巖尊儀
(そうけんいんでん ぞうだいしょうこく いっぽん たいがんそんぎ)14文字
●豊臣秀吉:国泰裕松院殿霊山俊龍大居士
(こくたいゆうしょういんでんりょうざんしゅんりゅうだいこじ)13文字
●徳川家康:安国院殿徳蓮社崇誉道和大居士
(あんこくいんでんとくれんしゃすうよどうわだいこじ)14文字
(※これに階位を表す「一品大相国」がプラスされ19文字になる場合もあり)
フツーの人の戒名が六文字前後だというのに、軽く倍以上はあります。
彼らのがサイコーだと思うでしょ?
ところがどっこい、この三大武将を凌ぐ、スーパーウルトラなっがーい戒名(おそらく最高?)があるのです。それはこちら!
●冷光院殿前少府朝散大夫吹毛玄利大居士
(れいこういんでんぜんしょうふちょうさんだいふすいもうげんりだいこじ)
なんと18文字!うっひゃー!(ちゃんと読んでくれた?打つのも大変ッスよ)これくらいの戒名を、今現在つけてもらうとしたら、いったいいくらになるんでしょう…。
ま、下衆の勘ぐりは置いといて、タネ明かしとまいりましょう。
この戒名の持ち主こそ、忠臣蔵で有名な浅野内匠頭こと、浅野長矩です。 日本を統一したり支配したりしたうわけでなく、ただ若くして切腹した分家大名の彼が、日本最長クラスの戒名の持ち主なのです。
おそらく、大石内蔵助以下、残された家臣がリキんでつけたのでしょう。戒名は残された人々がつけるものだと、証明しているいい例です。
この戒名のパーツを解説してみますと、
「前小府」=「前の内匠頭で」
「朝散大夫」=「位は従五位下」
「吹毛」=「毛を吹くほど細かい欠点も見のがさない」
「玄利」=「鋭く奥深い道理がある人」
と、こんな感じでしょうか。
人間関係のトラブルで切腹させられた人だけに、
「俺は悪い事してないんだー!」
「不正は許せない性分なんだー!」
「いい人間だったんだ!」
と、全身全霊で表現している、お名前なのです。
余談ですが、このロング戒名、実際に浅野内匠頭のお墓に彫られています。毎年のように映像化される忠臣蔵モノでは、このお墓も作らなければなりませんから、墓石からハミ出しそうなこの戒名は、かなり美術さん泣かせでもあるのです。
【戒名でたたり封じ?】
浅野内匠頭のように、残された人がリキばってつけた戒名というのは、ほかにも沢山あって、例えばこれなんかそう。
●石川五右衛門:融仙院良岳寿感禅定門
(ゆうせんいんりょうがくじゅかんぜんじょうもん)
かいつまんで言うと「出家僧なみのよい行いをした、めちゃめちゃ高徳の人」という意味。
フツーに考えると、刑死した大ドロボーなんですから、仏教活動にいそしんでたり、高徳のハズがない。
しかも、「仙」の字は仏教関係者以外で、徳の高い人に与えられる文字。釜ゆでになった五右衛門ですから、後世の人が、タタリをビビッてつけたとしか考えられません。ここまでくると、生前の人格・業績というのはまったく無視です。