これは、忘れられた年代に起きた物語である。
世界は、長年わたって混沌として、アタカ、デース、セイという三つの部分に区切られていた。僕は、こんな混沌たる坩堝(るつぼ)に生まれ、そして、崩壊しそうな土地に踏み、ミラクル的な人生を始めた。
世界地図の南の方に位置するアタカは、僕の故郷(ふるさと)であった。僕は、物心がついた頃から、周りの人に、「魔王(サタン)の転生」つまり例のあの戦争で死んだあの魔王の生まれ変わりだなんて、よく言われていた。両親は、それに対しては、平気に応対し、さりげない表情を無理やり装うことにしていた。両親の庇護で、いろいろあって辛かった日々を送って、とうとう立派な大人に育ってきた。
魔王などと言われたのは、例のあの戦争が幕を閉じて以来、ちょうど3日後の真夜中の12時に生まれたのが原因の一部だとされて、もう一つは、髪が何故か真っ赤であることだった。人間が死んでからの3日目は、その時点のあたりに生まれる新生児の肉体を託して、この世に転生してこられる日だとされていたのに加えて、深夜の12時に生まれた赤ちゃんが、忌まわしい物だとも、いつも聞いていた為、僕の誕生は、大層に不吉だという噂が、あっという間に広がって、まもなく魔王の転生になり、定着してきたのだった。