ある男の人が、引越しをしました。少し古いけれど、広くて、家賃がとても安い家でした。大家さんも親切そうな人でした。
引越ししてから2週間ぐらいたった日の夜のことです。ドアをトントン…とたたく音がしたので出てみると、だれもいません。まちがいだろうと思って部屋にもどると、また、トントン…。
子とものいたずらかもしれないと思って、そのままふとんに入り、うとうとしたときです。女がしくしく泣いている声が聞こえてきたのです。目を開けると、人がすわっているのが見えました。長い髪の女の人でした。「もしもし、どうしたんですか?」と聞くと、その人はゆっくりこちらを振り向きました。そして、真っ赤な女の人を開けて、げらげら笑い始めたのです。男の人が、
「わーっ!」と声を出すと、それは消えてしまいました。
その日から毎晩、夜になると変なことが起きました。たとえばがやがや話す声がしたり、家がぐらぐらゆれたり、白いものがふわふわ飛んだりして、全然寝られません。男の人、はじめとてもこわくて、ふとんの中でぶるぶるえていたのですが、だんだん慣れてくると腹が立ってきました。祖もで「いくら安いといっても、これじゃ寝不足で死んでしまう!」と、大家さんに文句を言いました。すると大家さんは「やっぱり、出ましたか…。実は、あの家の下はむかし墓場だったんです。それを知らないで家を建てたのですが、変なことが起こるので、私は引っ越して、ほかの人に貸すことにしたのです。しかし、最近はだれも借りてくれなくて…。ひさしぶりに見つかったんですけどね…。でも、秘密を知られてしまったから、あなたにも墓の中に入ってもらわなければ…ひひひ」…。
その後、その男の人を見たという人はだれもいないそうです。
あなたの家は、だいじょうぶですか?もし、安すぎたら、何か理由があるのかもしれませんよ。