yamoli66 |
2012-06-23 20:25 |
『東京タワー』の翻訳(282)
Ⅸ(27) オカンの遺影を囲んでみんなで飲む。しばらく酒を断っていたので急に弱くなった気がする。ブランデーしか飲まないオトン。しかも、明治屋にしか売ってないデラマンというブランデーが旨い、あれしか飲んだ気がしないというので六本木の明治屋まで行って買って来た。 自称ブランデー好きのホセだが今まで白木屋のブランデーしか飲んだことがないので「これ旨いッスねー!」と連呼しながらも、その違いがわかっているのかは怪しい。 「しかし、なんやなぁ……。東京で色々お母さんの話を聞いとると、私の全く知らんお母さんよ。へぇ、そういう所もあるんやなぁと、聞いとるたんびに思うもんねぇ……」 オトンは何度もその話をした。ボクは聞くたびに、そりゃそうだろうとも思った。 「結婚したばっかりの時よ。お母さんがこう言うたんや。浮気をするんなら、わからんようにやってくれち。そういうことを面と向かって言う女やったねぇ」 オカンはずっと、オトンの前ではそうやって、強がった所ばかり見せていたのではないだろうか。そしてオトンはそう見せているオカンしか見ていなかったのかもしれない。 オカンが息を引き取った直後、オトンがボクに言った。 「今際の際に起き上がろうとしよったなぁ……。たいしたもんやった……。お母さんは入院してから死ぬまで、苦しかったやろうけど、最後まで弱音を吐かんやったのぉ……」 でも、オトンは知らない。オカンが死ぬ二日前に、痛みにのたうちまわって自分で点滴の針を引き抜き、吐き出した言葉を。 "死にゃあええ……" それはオトンとオカンに限らず、ほとんどの夫婦がそうやって互いのどこかを見せないまま、知らないまま、ずっと一緒に暮らしているのかもしれない。 初七日が過ぎようとしている。オトンは明日、小倉に帰るそうだ。そしてまた、前と同じように別々の暮らしが始まる。四十九日にはまた出て来ると言っている。そして、年に一度、オカンの命日には東京に来ると言った。 大家围着母亲的遗像在喝着酒。过了一会儿没有酒了,气氛马上就不热闹了。父亲呢只喝白兰地,而且是只喝明治店卖的那种白兰地,所以就去六本木那里的明治店买来了那种酒。 自称喜欢白兰地的ホセ至今也并不是只喝白木店的白兰地,连续喊“这个真是太好了!”他是否真的明白两种酒的不同呢?真有点怪。 “但是,真是那样吗?在东京每当听到父亲讲妈妈各种各样的故事,就感觉到我是完全不了解妈妈。哎,怎么会有那样的事情呢?每一听到讲出来的时候总会这样想。” 父亲还总是反复那样说。我每次都那样有疑问,还反复问那是真的吗? “刚结婚的时候,妈妈这样说过。如果有什么婚外恋,就别让我知道。这样的话都是面对面说的。” 母亲在父亲面前一直这样做。不就是让看到自己好强的地方吧。也许母亲只是让看能看到的东西。 母亲刚咽气的时候,父亲对我说: “在现在这个时候大概会有这样的事情。你妈妈从入院到去世,的确是很难受的,但在最后没有吐出什么小声的话吗?” 的确,父亲并不知道。母亲在死之前的前两天,因疼痛乱翻打滚,拔掉打点滴的针,说出这样的话: “还是死了算了。” 这不仅限于父亲和母亲吧,几乎所有的夫妇都这样做吧,相互之间有什么地方不让看,有什么事情不让知道,而且就这样一直生活下去。 头七日已经过去了。父亲明天就要回小仓了。而且就像以前那样又开始各自的生活了。父亲说了到四十九日那天他还要来东京。而且也说了每年一次在母亲周年的日子也到东京来。 |
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