yamoli66 |
2012-05-20 20:33 |
『東京タワー』の翻訳(260)
Ⅸ(5)
その時。 オカンのくちびるが一瞬、なにかを言おうとして開いたと同時に、ボクの握った手を痛いくらいに握り返した。 するとオカンが目をこぼれるくらいに見開いて、上半身を、強い力で起き上がらせた。どこにそんな力が残っていたのだろうかと驚くほどに腹筋を使って、硬い弓を引くように胃を持ち上げた。 ボクの手を潰れるくらい握って、身体を起こそうとした。 オカンの見開いた目がボクに近づいて切ない口元をした。 「オカン!!」 「栄子!!」 それからオカンは海岸の砂山が引き潮でゆっくりと崩れてゆくように倒れて、握りしめたボクの手から力を抜いていった。 「オカン……?どしたん……?」 心電図のグラフが、長い信号音に変わってテレビドラマのようにまっすぐな線が描いた。 「オカン……?ねぇ……?そうやろ?」 医師がペンライトをオカンの瞳に当てる。聴診器をあてがい、脈拍を取ると自分の腕時計を見て頭を下げた。 「午前七時三十分。ご臨終です……」 決まりきった言葉と一緒に看護婦も頭を下げた。 「……。オカン……。オカン……」 呼んでも、揺すっても、オカンは働かなくなった。 医師たちが退席した病室で、ボクはずっとオカンを呼んだ。 「……。オカン?ねぇ、オカン……。苦しかったやろ。よう頑張ったね……」 オトンが病室から、ゆっくりと出て行った。ボクはオカンの髪を撫でて、汗を拭いて、くちびるにキスをして、抱きついて泣いた。まだ、こんなに温かいのに、それで死んどるなんて、なんかようわからんけど、オカンはなんも働かんようになった。 でも、もう、あんなに苦しまんでいいのなら、それは、あれやし……、オカンの顔はその時、本当に穏やかで、一生懸命生きようとした人やから、こういう顔で眠れるんかもしれんし、オカンは本当によく頑張ったと思う。本当に頑張った人の美しい顔やった。 二〇〇一年四月十五日。 就在那个时候。 也就在那一瞬间。母亲张开嘴唇还要说什么的同时,反而用力握疼我的手。 这时使出要把眼睛睁破的力量睁开眼睛,上半身强有力地立了起来。真让人吃惊,不知在什么地方还残剩有这种力量,利用肚子上的筋肉,就像拉硬弓那样摆出了肩。 要把我的手挤破那样使劲握着,要是整个身体都要站起来。 母亲用睁开的眼贴近我好难过的嘴角。 “母亲!!” “荣子!!” 然后就像海岸的砂山那样,海潮冲来便慢慢地崩溃而倒下了,母亲握紧我手的力量也用完了。 “母亲……怎么啦……” 心电仪变成了细长的声音,就像电视剧里那样变成了直线。 “母亲……怎么啦……在骗我们吗?” 医生用小手电照了母亲的眼睛,把听诊器也贴到了她的身上,把着脉搏看着自己的手表,低下了头。 “早上7:30,生命结束了。” 说出这样结局的话来,其他护士们也低下了头。 “……母亲……母亲……” 我使劲喊,使劲摇,母亲却一动也不动了。 在医生们退出的病房里,我一直还这样喊着母亲。 “母亲……唉,母亲。你的一生太辛苦了,那样努力着。” 父亲从病房慢慢地走了出去。我梳理母亲的头发,擦着汗,吻了一下嘴唇,抱着痛哭起来,身体虽然还是那样的温暖着,但那已经是死了。虽然不明白要怎么做,但母亲怎么也不动了。 可是,如果那样苦难都能忍受的话,也就无所谓了。母亲的脸在那个时候相当的温和。一生拼命生活的人,用这样的脸离开人世,她实在是顽强的人,真是顽强人美丽的脸。 2001年4月15日。 |
|