yamoli66 |
2012-05-13 16:36 |
『東京タワー』の翻訳(255)
Ⅷ(31)
四月十四日土曜日 明け方になり、オカンの容態に急変した。心拍数、脈拍は乱れ、熱が三九度以上出た。血圧はどんどん下っていく。医師や看護婦の働きが朝から慌しくなっていった。 「オカン、オカン……。わかる……?」 薄く開いた目では、かすかにボクを追っているような気がしたけれど、ほとんど意識は消えかけていた。 昼前にオトンが小倉へ帰るための荷物を持って病院に現れた時には、更に状況は悪化(あっか)していた。 「そうしたんか……?」 「急に悪くなった……」 担当医は小声で告げる。 「今晩がヤマになるでしょう」 身体中の毛穴がきゅうっと縮まるようだった。でも、思った。 オカンはきっと、オトンに帰って欲しくなかったんだろう。 オトンは結局、小倉に帰ることを取りやめにした。 夕方になると病室にたくさんの人が集まった。ブラインドから春の夕陽が差し込む病室で、みんながオカンを見守っている。 「オカン、みんな来てくれたよ……」 オカンの空虚な瞳は、どこも見ていないようだったけど、本当はみんなを見回して、「よぅ来たねぇ」と言っていたのだと思う。 オカンはとっても静かだった。もう痛くはないのかもしれない。 ミッチャンが、今日は親子三人水入らずにしてやろうと言い、みんながひとりずつ悪寒に声を掛けて病室を出て行った。 暗くなった病室、ボクとオカンはベッドの両脇に座ってオカンの手を握っていた。 その頃、巨人戦は九回裏。ツーアウト一、三塁(とりで)でバッター清涼。5対5同点からの清原(きよはら)のひと振りはレフとスタンドに突き刺さるサヨナラ3ランホームラン。 サヨナラー!!サヨナラー!!サヨナラー!! 昨日の松井、今日の清原。オカンは二日続けてこの二人からサヨナラしてもらった。 オカンはすやすやと赤ちゃんが眠るように静かにだった。 "オカン、もう行くん?" "オレ、まだオカンになんもしてあげとらんのよ……" ボクとオトンとオカン。 ボクたち親子三人が同じ部屋の中で寝るなんて、何年ぶりなんだろう? オカンの最後の願いはボクたちがこうして同じ場所で眠ることだったのだろう。 四月十四日 星期六 天亮的时候,母亲的状态有个急剧性的变化。心率和脉都乱了,发烧到39度以上。而血压一直在往下降。医生和护士们从早上开始就一直忙碌着。 “母亲,母亲……,清醒吗?” 微微睁开的眼睛,在模糊朦胧地寻找我。几乎意识已经没有了。 上午,父亲拿着回小仓的行李来到医院的时候,母亲的病情更加恶化。 “怎么回事……?” “正在急剧恶化……” 主治医生小声告诉说。 “今天晚上有可能到关头。” 身体的毛孔急剧收缩。 母亲大概是不想让父亲回家吧。 结果,父亲取消了回小仓的计划。 到傍晚,病房来了很多人。春天的夕阳从百叶窗照进了病房,大家围守着母亲。 “母亲,大家都来了。” 母亲空虚的瞳孔,什么也看不见了,好像把大家都看到了,像是在说:“你们都来了。” 母亲很安静了。已经没有什么痛苦了。 ミッチャン姨说今天就让他们一家人在这里吧。说后其他人陆续给母亲说一声安慰话离开病房。 病房黑暗下来。我和父亲坐在母亲病床的两侧,分别握着母亲的手。 那个时候,巨人已经战到第九回。出局一、二垒的击球手清原,从5对5同点,由于清原的一挥击中左翼得3分。 再见!!再见!!再见!! 昨天是松井,今天是清原。母亲在这两天分别和这两人再见。 母亲安静地长眠离世了。 “母亲,你已经走了吗?” “可是,我什么也没有给母亲做。” 我和父亲、和母亲。 我们一家三人在同一房间休息,是多少年前的事情了。 母亲的最后愿望就是希望我们就这样在同一个地方休息。 |
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