yamoli66 |
2012-05-12 20:45 |
『東京タワー』の翻訳(254)
Ⅷ(30) 四月十三日金曜日 オトンが朝来た時にはオカンの痛みは鎮まってく、ぐっすりと眠っている時だった。昨晩のことを知らないオトンはオカンの寝顔を覗き見て「よぉ寝とるわい」と言った。 「しばらく、お母さんもこの状態が続きそうやのぅ」 なんの根拠(こんきょ)を以てしてかは知らないが、オトンはそう言うと、明日、一度小倉に戻って来ると言い出した。 「まだ、大丈夫やろう。一日帰って、用事を済ませてから、すぐ戻るたい」 言われてみれば、もう二週間も東京にいる。仕事があるのなら、色々と面倒なことになっているだろう。 ボクもここ数日、ほとんど寝ていない。疲労で精神力が切れそうになる寸前だった。オカンの手足を拭いて仕事に出る。 そしてまた、夜。病院に向かいながら車中の中でプロ野球中継(ちゅうけい)を聴いていた。普段なら毎試合の結果を気にしているところだが、この開幕から夜、ほとんど病院にいるもので、巨人がどうなっているのか、まるで知らない。 小さい頃、ボクはオカンに買ってもらった巨人のスタジアムジャンパーが好きで、よくそれを着て写真に写っている。 「あんたは長嶋が好きやったねぇ」 三十を過ぎてもまだ長嶋が好きなボクは巨人と同じユニフォームの草野球チームを作り、試合に出掛けては負けている。 メンバーを連れて家に帰って来ると風呂が沸かしてあって、オカンは決まってこう言った。 「また、負けたんやろ?」 そして、大きな木桶いっぱいに握ってあるおにぎりを出して、みんなに食べさせていた。 ラジオ中継の試合は延長十回裏。相手投手、横浜の森中から四番松井が看板直撃になるさよならホームランを打って試合を決めた。 サヨナラー!サヨナラだー!!松井のサヨナラホームラン!! 病院の駐車場に車を止めて、それを聴いていたボクにサヨナラの声が何度も耳に響きいた。 「オカン、松井はサヨナラホームラン打ったんよ」 氷ををくちびるに当てながらオカンに報告した。今日は、昨日と比べるとだいぶ落ち着いている。とても優しい表情だった。 おしぼりで手足を拭いて、手のひらをマッサージしていると、オカンがなにか言いたそうに、口をパクパク働かしている。もう、声がほとんど出ていない。 「……………………」 「なに?どうしたん?」 「……………………」 オカンの口元を注意深く見て言葉を探った。 「ありがとうって、言いよるん?」 オカンは小さくうなずいた。 四月十三日 星期五 父亲早晨来的时候,母亲的疼痛被镇静下来,正在深度睡眠之中。并不知道昨晚发生事情的父亲看着母亲的睡像,说:“睡得还真不错。” “以后母亲的这种状态会保持下去吧。” 没有什么根据的父亲说出了这样的话,也说出了明天要回小仓一趟。 “这个大概没有问题了,回去之后,一旦有事,马上就回来。” 这样说来,父亲在东京也已经有两个星期了。因为他有工作,还有很多麻烦的事。 我呢,这些天也几乎没有睡觉。因为过度疲劳,精神到了极点。擦完母亲的手脚之后紧接着就要出去工作了。 而且,还都是在晚上。在去医院路上的车中听着棒球比赛广播。平时很注意每次比赛的结果,但这次开幕以来的晚上,几乎全都在医院,巨人进展到什么状态,完全不知道。 小的时候,我非常喜欢母亲买来的印有巨人的运动员的衣服,经常穿那衣服照相。 “你很喜欢长岛吗?” 过了30岁的我,依然还在喜欢长岛的我组建了和巨人相同的球队,只要比赛就会输。 带着队员回到家里洗澡之后,母亲就肯定地说: “是不是又输了呢?” 接着,就从放满饭团子的大木桶里拿出来吃的给大家吃。 广播播送的比赛延长了十回。从横滨的森中那里,四番松井直接击中看板打到全垒打,决定了比赛。 再见--!再见—!松井的全垒打!! 车停到了医院的停车场,正在听着的我,不知听到了多少次“再见—”。 “母亲,松井打到了全垒打。” 一边向母亲嘴边放冰块,一边把这个消息告诉了母亲。今天比昨天相对稳定了许多。有一副特别优雅的表情。 用毛巾擦着手脚,然后按摩手掌,之后母亲要说什么,嘴一张一合动着。几乎声音已经发不出来了。 “……” “说什么,要我干嘛?” “……” 全身心地看着母亲的嘴型,猜测讲什么。 “太感谢你了。就要说这些。” 母亲微微地点点头。 |
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