yamoli66 |
2012-05-11 22:24 |
『東京タワー』の翻訳(253)
Ⅷ(30) 四月十二日木曜日 その夜は、今までにないくらいオカンは苦しみ続けた。そんなに身体が働くのかと驚くほど全身をねじってもがき続けた。 ボクはナースコールを何度も押して助けてを求める。過分なほど投与しているモルヒネさえ、もう効かないのだろうか、状況が静まる気配がない。 「オカン、痛いんたろ、かわいそうに。大丈夫か。頑張ってな。オカン。オカン……」 なにも救ってあげることさえできない上に、もはや、掛ける言葉さえ無力に感じる。 耳の後ろや、首のまわりが熱い。各部位のカテーテルからポコポコと音が逆流している。酸素吸入のマスクをつけても苦しいのか手で払いのけてしまう。 動悸が荒い。痛みは鎮まるどころか、更にひどくなっているようだった。身体をうねらせて、声にならない悲鳴を上げた。 このまま気絶してしまうのではないと思った時だった。オカンは自分で腕に刺してある点滴の針を引き抜いた。それは、事故ではなく、明らかに故意にそれを自分の腕から抜き取ったのである。 「なんしよるんか!!そんなことしたらいかんやろ!!オカン、しっかりしてくれ!!」 針が抜けテープがめくれた部分から覗く皮膚(ひふ)は鬱血して葡萄のように膨らんで紫色(むらさきいろ)に染まっている。 ボクはオカンの手を強く握りしめて目を見つめた。オカンも見開いた目でボクを眼光炯炯と見据えている。 そしてオカンは泣き顔にならないゆがんだ泣き顔で、涙を落としながら、すり潰すような声で言った。 「死にゃあええ……」 「なにを言いよるんか……」 「もう、死にゃあええ……」 「なにを言いよるんか!!オカン!!」 ボクは強く握ったオカンの手を何度もベッドに叩きつけて言った。 「なんで、そんなこと言うんか!!」 オカンが初めて吐いた弱音だった。今までどれだけ苦しくて、痛くても、ずっと前向きに歯を食いしばり、指先に力を込めていたのに、遠くなる意識の中でオカンはそう言った。 四月十二日 星期四 从那天晚上到现在,母亲从来还没有出现过的那样的苦痛在持续着。为此,身体扭动了起来,其拧转和挣扎的程度让人吃惊。 我也摁过几次铃呼叫向护士求助。没有办法,只有过分地投入吗啡,但其效果几乎没有作用了。安静的迹象已经没有了。 “母亲,还在痛吗?好可怜呀!没有关系,再坚持一下,母亲,母亲……” 也没有什么可抢救的办法,尽力用语言来表达但也感到无力。 耳朵的后面和脖子的周围在发烧。从各种管子里发出了呼噜呼噜的逆流声音。戴上吸氧管子面具后可能很难受,母亲就用手去扒。 心跳在紊乱。为了采取镇痛措施,紊乱更剧烈。身体翻腾着,发出的声音也更加悲鸣。 这个时候我也想是不是就这样气绝而死了呢?母亲自己把扎在手腕上的点滴针头拔下来的。那并不是什么事故,那是很明显地故意从自己的手腕上拔下来的。 “要干什么呢?!做那的事是不可能的!!母亲,安静一会儿!” 拔掉针,在贴有胶带的弯曲的那一部分的皮肤开始淤血,像葡萄那样膨胀起来并染成紫色。 我使劲握着母亲的手看着她的眼睛。母亲也用睁开的眼睛炯炯有神地盯着我。 接着母亲在还没有变成哭丧脸而是那样歪曲的哭脸上流下了眼泪,用崩溃的声音说: “还是死了好……” “你这是在说什么呢……?” “还是,死了好……” “不要说那些话了!!母亲!!” 我用力握着母亲的手,几次敲打着床。 “怎么净说那样的话呢?” 母亲第一次吐出这样的微弱的声音。到现在别管多么难受多么痛苦,一直咬紧牙向前冲,在指尖上用上力,在遥远的意识当中,母亲这样说。 |
|