yamoli66 |
2012-04-30 17:05 |
『東京タワー』の翻訳(250)
Ⅷ(27)
「ここやったら、他の患者さんに気兼ねせんでから、みんなお見舞いに来れるね」 「そうやねぇ」 「ここ広いけん。ベッド入れてもろうたんよ。毎日これで寝るわ」 簡易ベッドといっても、夏場に縁側で使うようなビニール巻きのデッキチェアで、こんなものでも一日数百円のレンタル料を病院に納める。そして、個室に移るとすぐに看護婦が室料に関する料金表を持って来た。保険の利く六人部屋と違って、ここは一日四万円らしい。一ヶ月で百二十万円。新居の敷金礼金等を支払ったばかりで、毎月払えるのか心配になった。 オカンはもう固形物は全く口から入れることができなくなり、口にするのは水分だけ。ほとんどの栄養が点滴から注入される状態になった。 いつの間にか朝型の生活をしているらしいオトンが毎朝、笹塚の家から病院に来る。オトンが来ると交代でボクは仕事に出掛ける。病室で書ける原稿(げんこう)は極力そこで片付けた。 ミッチャンは相変わらず毎日来てくれる。毎日、誰かしら見舞いに来る。オカンがひとりきりになっている時間はほとんどなかった。 最初の頃は身体を起こして座ることもできたし、しっかり会話もできた。 でも、桜の花が開くたびにオカンの身体は自由が利かなくなり、もう、トイレにも行けなくなった。ひとつずつ、オカンの身体の中を通るカテーテルが増えてゆく。 ボクはその過程をただ横で眺めるだけで、なにもしてあげることも、奇蹟も起こせないまま、ただそこにいる。 微熱が続いている。ボクは製氷器から氷を運んで来て、洗面器の中でタオルを冷たくしながら手のひらや足のうら、寝着から出ている部分を一日に何度も冷やした。 「オカン、絶対治るんやけん、頑張らんといかんよ。心配せんでよかよ」 オカンはボクの方が見ながら、ただうなずいていた。 「痛いんやろ?腹痛いんやないと?」 徐徐に腹水が溜まり始めていた。 “搬到这里的话一个人一个病房,就不影响其他病人了,亲戚朋友各位也就可以来探视了。” “就这样办吧。” “这里宽敞一点,还可以搬床进来。每天陪护的可在这里睡觉。” 虽说是简易床,就像夏天里在走廊使用的折叠椅那样。这样的东西使用一天也要向医院交几百元的租用费。而且一旦搬到独自病房,护士马上就把有关病房费用的表拿了过来。保险的功能和六人病房也不同,这里约一天4万元。一个月的话120万元。新租房的预付款和中介费刚刚付完,能否每月付足款呢?对此很担心。 母亲已经完全不能从口中吃硬食,从嘴里进入的也只能是水。母亲已经达到这种状态:所有的营养都通过点滴注射进去。 父亲一直还是睡懒觉,每天早上从笹塚的家出发来到医院来。父亲来之后就和我交班,然后我去忙工作了。在病房所做的原稿作品尽可能在那里整理好。 ミッチャン还照旧每天都来。每天也不知道多少人来探望。母亲独自决定的时间几乎没有了。 开始还可以把身体扶起来坐着,也可以好好地对话。 每当樱花盛开的时候,母亲的身体就不那么自由灵活了,也不能去卫生间了。这就又增加了一个穿过身体的导管。 我也只能站在旁边看这样的操作过程,别管再多么努力做什么,也没有什么奇迹会发生,也只是在这种状态下维持了。 还在持续低烧。我从制冰盒里把冰块拿过来,在洗脸盆里把毛巾弄凉,擦着手掌和脚心以及从被窝里露出的其它部位,一天要擦好多次以便给身体降温。 “母亲,绝对还可以治好,再坚持一会儿。不用操什么心。” 母亲看着我,也只是点点头。 “痛不痛?肚子痛不痛?” 慢慢地开始腹积水了。 |
|