yamoli66 |
2012-04-01 21:03 |
『東京タワー』の翻訳(233)
Ⅷ(10)
「胃の辺りにつかえてから、全然ものが食べられん」 「まぁ、手術せんといかんやろうの」 「もう手術はしとうないがね」 「しとうないっちゅうても、医者が切るっち言うんなら、せにゃあいかんやろ」 「そうや。治ることはなんでもせんといかん」 ボクもそれを勧めた。 「近いうちに先生から話があるけん、聞いてみらんとわからん……」 そして、オトンとオカンはたいして共通の話題もないのか、とりとめのない話をボソボソ続けている。ボクは例によってプリンを食べながら、その様子を黙って見ていた。 その時、ボクはオカンの左手の薬指に指輪を見つけた。たしか、ノブエおばさんに貰ったという金の指輪。昨日までは右手の薬指にしてあったその指輪が、今日、オトンがやって来るとわかっているその日に、左手の薬指に移動していた。 それを見てボクは、オカンがオトンに対して思っている色々なことが、それがわかったような気がした。 「なんか、おいしいもんでも食べて帰りなさい」 オカンの言葉に見送られてボクたちは病院を後にして、えのもとやホセと合流した後、中華料理屋に向かった。 オトンとふたりきりでは無言になりがちだが、オトンもだいぶ慣れてきたえのもとたちがいるとなんとか会話も弾む。この時期から感じ始めたことだが、オトンがボクが思っているほど、無口ではないようだ。まぁそれは自分に興味のある話題ならばの条件付きだが、結構冗談なんかも言ったりするのだなと今更ながら発見していた。 「麻雀もやなぁ、六十過ぎでからやのぉ。負けんようになったんは。どうやったら勝てるかが、やっとわかったごとあるのぉ」 麻雀を覚えたてのホセとえのもとが興味津々に聞き入った。 “胃的周围都扩散到了,完全不能吃东西了。” “啊,也不能做手术了?” “已经不能做手术了。” “虽然不能做了,医生也说要切除,也不做了。” “是吗?虽然不能治疗了,但也要治一治。” 我也这样劝说。 “最近医生也有话,是不是要听一听。” 就这样,父亲和母亲没有共同的话题,没有主题的话就这样干巴巴地说着。我和往常一样吃着布丁,默默地看着他们的样子。 这时候,我发现了在母亲左手无名指上戴有戒指。这确实是从ノブエ姨那里弄到的金戒指。直到昨天,一直把那戒指戴到右手的无名指上,今天知道父亲来,就把它移到了左手的无名指上。 看到这些,我终于明白了,母亲对父亲所想的各种事项。 “什么,就是再好吃的东西,吃完后也要回来。” 母亲用这句话把我们送出门,我们把医院抛在后面,和夏本和ホセ会合后,朝中国餐馆走去。 当只有和父亲两个人在一起的时候母亲就无话可说了,而对父亲来说倒是习惯于夏本他们的存在,这样说话很起劲。从最近才开始感觉到,父亲并不是像我所想象的那样沉默寡言。对自己感兴趣的话题算是个附加条件,这样的话就会很快地开玩笑交谈起来,现在有了更多的发现。 “过六十岁了,也开始玩麻将了。经常输。怎么玩才能赢呢?玩的时候也明白一点。” 对麻将明白一点的ホセ和夏本则津津有味地、全神贯注地听着。 |
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