yamoli66 |
2012-03-16 21:40 |
『東京タワー』の翻訳(226)
Ⅷ(3)
六人部屋の病室。オカンのベッドは入口を入ってすぐ右手前に用意されていた。これから精密検査のための数日が始まる。 「知っとる看護婦さんもおるけんよかった」 「ちゃんと検査してもらい。しょっちゅう来るけん、なんか欲しいものあったら言いよ」 「そげ来んでもよかたい。あんたも忙しかろうが。そやけど、パンのエサだけちゃんとしてやりなさいよ」 「うん。わかった」 「それから」 「ん?」 「オトンにも、一応連絡しときなさい」 「あっ、うん。わかった。しとくよ」 その頃はボクの仕事も机に向かうだけではなく、なにかと外に出歩かなくてはならない内容のものが増え、一日が慌(あわただ)しく働いていた。 以前は仕事の経理もオカンがしていたものだが、代官山に事務所を移してからはオトン方の従姉妹の博子がそこで働き始めていた。それからは、ボクがどんな仕事をしているのか、オカンはほとんど知らない。 そして、オカンと仲の良かった彼女がボクとはもう別れてしまっていることも知らなかった。初めてその彼女を家に連れて行ってオカンに会わせた日、彼女は鞄の中からリンゴをひとつだけ出して、お土産ですとオカンに渡した。 彼氏の母親にではなく、まるで友達にするようなその気安さがオカンには合っていたようで、また、それを喜ぶ性格のオカンと彼女はその日のうちに冗談を言い合って大笑いするような関係になった。 そして、ふたりが知り合ってしばらくした頃、彼女がお母さんに指輪を貰ったと言ってボクにそれを見せた。 その指輪は、病院の借家で空き巣に入られた時にも、それだけは唯一、奥の奥へと大切に保管しておいたために残ったもので、その昔、オトンに買ってもらった、透明の石が付いた指輪だった。 「貰っちゃて、いいのかな?」 「いいんじゃないの。くれるって言うんだから」 光に当たるも透明の中に虹のような七色の輝きが見える石だった。貧乏性のオカンは、その指輪を普段につけることができず、時折タンスの奥から取り出してはいつも眺めるだけで「これが盗まれんでよかった」とそのたびに言った。 どれくらい価値のあるものかはわからないが、少なくともオカンにとっては大切な指輪だ。オカンは、いつかボクと彼女が一緒になるのだろうと、思っていたみたいだ。 这个病房里能住六人。母亲的病床紧挨着入口,在入口的右侧,已经准备了。从今天开始,要用几天的时间要用精密仪器检查身体了。 “如果认识的护士还在就好了。” “正好是要检查的,我就不常来了,有什么需要的就说好了。” “不用来的,你也很忙的。但是,要照顾好小兔子。” “是的。我知道。” “还有,” “什么?” “也和父亲联系一下。” “好,知道,走了。” 那个时候,我的工作不仅仅是在桌子上了,必须要到外面的工作在逐渐增加,每一天都是那样的繁忙。 以前我的工作的经理都由母亲在操办,但搬到代官山之后一位叫博子的堂妹开始代办起来。从那以后,我具体在做什么工作,母亲几乎是不知道的。 而且母亲也并不知道,和母亲像好朋友似的那位女朋友和我也已经分开。第一次带她到家里和母亲见面那一天,她从包里只拿出一个苹果,作为特产交给母亲。 不像对方的母亲,而且就像朋友那样,不拘泥地和母亲聊天。而且,也就在那一天,她和喜兴的母亲建立起了可以幽默大笑的关系。 而且,两人刚认识不久,女朋友就告诉我,而且还拿出来让我看,她从母亲那里拿到一枚戒指。 我和母亲租借在医院的时候,贼乘人不在家进房偷窃。那枚戒指是唯一一个在很神秘的地方保存的东西。那是在过去很久以前母亲买的,用透明石头做的戒指。 “拿到了?那戒指怎么样呢?” “虽然不怎么样,但还是说是给了我的。” 让那戒指对着光看,在透明中可看到七色的光线。贫穷的母亲在平时是不带那个戒指的,偶尔从衣柜里取出来也只是看看而已。每当那时就说:“这个没有被偷,真好!” 至于能值多少钱,这个说不清楚,但至少这对母亲来说是非常珍贵的戒指。母亲当然希望我和女朋友有一天能在一起生活。 |
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