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yamoli66 2012-03-13 20:31

『東京タワー』の翻訳(225)


Ⅷ(2)
  九州に帰るなどして一週間程度家を空ける時には、十一階に住むヨシエにぬか床を預(あず)け、毎日混(ま)ぜてくれるようにと頼んでいたものだが、この時は、そうはしなかった。
この上なくきれいに磨き上げられた古い炊事場のステンレスには鍋も布巾も掛けられてはいない。いつもと違って無機質なまで片付けられている。
鉄製の扉の鍵を閉める音は、雑居ビルの吹き抜け部分の上下左右に響いた。
ボクとオカンはエレベーターに乗り、道路を挟んだ場所に借りてある駐車場へと向かう。途中、乗り込んで来る住人に深々と頭を下げるオカン、管理人室から初老の管理人が「この間は、ごちそうさんでした」とオカンに声を掛けた。
甲州街道は車がひしめき合っている。その上を走る首都道路4号線はコンクリートの支柱を揺らしながら雷(かみなり)のような音をたてている。一階のスーパーからは賑やかな音が漏れてくる。若者の団体がボウリング場の入口ではじゃいでいた。
いつもと同じ風景。その中を先月よりはだいぶ痩せたオカンが歩いている。木枯らしがオカンの細くなった髪の毛を揺らしている。
ボクはその横で、入院道具の入ったオカンの合川の安物の鞄を持って見ていた。
その姿は小さくて、頼りなくて、切なかった。
横断歩道を渡る時、ボクは思わずオカンの手を取った。オカンの手を引いて歩くのはこれが始めてだった。
幡ヶ谷から高速道路に入る。
「車の運転は気を付けんといけんよ」
「疲れる時とかは運転せんごとしなさいよ」
「お酒飲む時は、車置いてから行きなさいよ」
繰り返し言うオカンの言葉にボクはただ「うん」と返事をするだけで、車は芝公園出口へと向かった。東京タワーを左側に眺めながら高速を降りるとすぐに病院はある。
甲状腺ガンの手術をした時と同じ、東京タワーの麓(ふもと)にある病院。
「東京タワーのライトの色は、冬と夏で色が違うの知っとった?」
「そうね。気が付かんやったねぇ」
「そしたら、今度、暖かくなった時に見たらええ。夏色になっとるけん」
「そうね。覚えとこう」
赤羽(あかばね)橋の交差点も、病院の外観も、東京タワーの赤も、その日は真冬の曇り空の中で全部が薄氷を纏(まと)ったように、白く、ぼやけて見えた。


有时候母亲回九州时,家里要空闲一个星期。这时就要请住在十一层的ヨシエ来做好米糖,希望她每天帮忙搅拌。但这一次,却不能那样做了。
不仅这样,在打磨地很亮很干净的老伙房的不锈钢台子上也不放锅和抹布了。与平时不相同的是无尽地整理到极致。
关闭铁质门锁的声音,传递到杂居楼的天花板上。
我和母亲一起乘电梯,朝道路两侧的租赁停车场走去。母亲深深地对乘电梯上来的同楼人点头。从管理室传来了中年管理人的说话声:“在这段时间里,您真是为大家做了很多好吃的。”
在甲州街道上汽车拥挤。在其上面的首都高速4号线摇动着水泥柱,发出雷鸣般的声音。从一层的小店传来了热闹的声音。年轻的人们在保龄球场的入场口站着。
和以前的风景没有什么不同。但比上月更瘦小的母亲在其中有走着。秋风吹动着母亲细小的毛发。
在其旁边,我背着装有住院用具的便宜的包,看看这些景象。
其身影变小了,无依靠的、很悲痛的。
在横穿人行道时,我不由地拉起母亲的手。牵着母亲的手走路这还是第一次。
从幡谷上了高速公路。
“开车时不能粗心大意。”
“累了的时候千万不能开车。”
“喝了酒,要把车放下然后自己走。”
对母亲反复说的这些话,我只是简单地用“嗯”答复着,车朝芝公园驶去。向左侧看着东京塔,从高速路走下来,马上就是了医院。
“东京塔的灯光,冬天和夏天的颜色不同。这个你知道吗?”
和做甲状腺手术时一样,医院就在东京塔的脚下。
“是的,我注意到了。”
“那样的话,这次变暖的时候就更好看了,变成了夏天的颜色。”
“是的,好像是那样的。”
赤羽桥的交叉点,医院的外观和东京塔的红色等,在那一天在严冬的云中,就像全部笼罩着薄冰那样,看得白色的很模糊。

yamoli66 2012-03-13 20:32
主人公看到母亲弱小的身体,心中很难受。他拉着母亲的手走在去医院的大街上。


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