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『春の夢』の翻訳(76)

『春の夢』の翻訳(76)

六(4)


と訊いた。陽子は首を縦に振って立ち上がった。踏み切りを渡り、駅の南側に廻ってラブホテルの前まで行くと、哲之は決して歩調を緩めぬまま中に入った。案内係がひとことも口をきかずふたりを部屋に導(みちび)き、ドアを閉めて姿を消してしまうと、哲之は陽子をベッドの上に押し倒した。哲之が陽子の唇を噛むと、陽子もそれに応じ返した。アパートの哲之の部屋でふるまうのと同じ体の働きであり、反応であった。そして同じ歓びの声をいつもより少し押さえぎみに漏らして、哲之にしがみついた。哲之はそんな陽子の顔を、じっと上から覗き見ていた。陽子が閉じていた目をうっすらとあけたので、哲之はもう一度、その人ともう逢わないでくれと言った。陽子は自分の体を完全に哲之のものにさせたまま、
「私、その人とも逢いたい」
と言った。哲之の心に、戦慄に似たものが走った。叫び声をあげそうになったが、かろうじて押しとどめ、陽子から体を離して、さっとと身支度を整えた。
「哲之、先に出てね。一緒に出て行くの、恥ずかしいから」
その陽子の言葉に何の返事も返さないまま、哲之は安普請(やすぶしん)のラブホテルの階段を降り、帳場で金を払い、つれの者はもう五分もしたから出て来ると言って表に出た。彼は走った。踏み切りの警報機が鳴っていた。切符を買い、向かい側のホームへの階段を駆け上り、発車寸前の電車に乗った。いつもは拒んで、最後のときは必ず避妊のための用具をつけさせるのに、きょうは、陽子は自分の体液を体の奥深く受け容(い)れた。今夜の陽子は平静ではなく、うっかり忘れていたのだろうか。それとも、わざとそうしたのだろうか。哲之は電車の座席に坐ってうなだれたまま考えつづけた。狐(きつね)につままれているような心持ちであった。
梅田駅に着いたのは十一時四十分で、もう住道を通る最終の電車には間に合わなかった。母のところに行こうか、それとも中沢のところで泊めてもらおうか迷ったが、足は自然に母のいるキタ新地に向かって働き出した。新地の本通りの手前で、彼はキンのことを思い出した。きょうはことのほか暑かったから、水も与えず、冷たい風に当ててやらなかったら、朝までに死んでしまうだろう。哲之はポケットの中の金を数えた。ブラホテルの料金が予想外に高かったので、ポケットには六百円だったと少ししかなかった。きのうの夜、磯貝が払ったタクシー代は確か三千二百円だったなと思った瞬間、そうだ、きょうはたくさんチップを貰ったのだ。あの数十枚の百円玉はボーイ服のズボンのポケットに入れたままだ。哲之はそれに気づいて、来た道をまた戻って行った。ホテルの裏の従業員用の出入口からロッカールームまでの高熱の漂う通路を走り、自分のロッカーの鍵を外して、ボーイ服のズボンから硬貨をつかみ出した。百円玉が三十三枚、それに五百円札が一枚入っていた。このホテルにページ・ボーイとして働くようになってから四カ月以上たつが、すべての客がチップをくれたのは初めて、またそれは减多にあることではない。そう考えると、哲之はあたかもキンが、自分の身を守るために、神通力を送って、客たちの心をあやつったのではないかろうという気さえしてきたのである。
哲之の乗ったタクシーは個人タクシーで、いかに運転手が己の商売道具を大切にしているかを感じさせるシート・カバーや足元のマットの清潔さに気づいて、彼は自分の汚れた安物の靴をそっとぬいだ。そして靴を裏返し、マットの端に置いた。
「そんな、靴なんかぬぎはらんでもよろしおまっせ」
運転手が笑って言った。まさか足元までバックミラーに映るわけはあるまいに、なぜこの運転手は、自分が靴をぬいだのに気づいたのだろうと哲之は思ったが、その理由は訊かず、
「あんまり汚れない靴やから、汚したら悪いと思て……」
と言った。
「マットなんか、あとで洗うたらすむことでんがな。金を払うて乗ってるお客さんや。そんな遠慮しとったら、世の中、生きていけまへんでぇ」
「……はあ」

阳子点着头也站了起来。过了道口转到车站的南侧来到幽会旅馆的前面,哲之坚定地毫不犹豫地走了进去。引导的人一句话也不说把两人领到房间关上门后就不见了。哲之把阳子压倒在床上,哲之吻起了阳子的嘴,阳子紧密配合着,和在公寓的动作相同,也有反应了。那些相同的欢悦声音虽压抑着也流露出来,紧紧抱着哲之。哲之从上面直视着阳子的脸。阳子微微睁开闭着的眼睛,哲之又一次说希望不再和那位男的见面。虽然把自己的身体已经完全归属于哲之了,但阳子还是说:
“我也很想见那位男的。”
在哲之心中,像是战栗那样掠过,就快要叫出声音似的,好不容易控制住停下来,从阳子那里离身走开,快速整理好身体。
“哲之,你先走,若一起出去的话感到很可耻。”
对阳子的话什么答复也没有,就走下简易的幽会旅馆楼梯,在帐台结了帐,说一声另一伙伴5分钟后就出来,然后走了出去。他开始跑了。道口的报警器鸣叫了。哲之买完票跑到前往对面站台的台阶,登上了马上就要开走的电车。以前总是拒绝,在最后那一刻一定要用上避孕的工具,而今天阳子接受自己的体液流到她自己身体深处而溶化吸收。今夜,阳子并不平静,是不是不留神给忘了呢?还是她故意那样做呢?哲之坐在电车的座位上一直在思考这个问题。像是被狐狸吸引住那样。
到达梅田车站时已经11:40,赶不上通往住道的最后电车了。到底是去母亲那里还是去中泽的地方住呢?他迷糊了。他的腿自然地向母亲所在的北新地那个方向移动。在通往北新地的大路旁边他想到了肯。今天是格外的热,也没有喂它水,如果不吹凉风的话,到明天早上肯定会死掉的。哲之数了数裤兜儿里面的钱。幽会旅馆所用的费用比原想的多,现在裤兜里也只剩下600元。昨天晚上矶贝所支付的出租车费确实有2300元,就在这瞬间他想到今天领到了很多小费。那数十枚的硬币还在工作服的裤兜放着。想到这些后又返回到刚才来的路上。快速从宾馆工作人员专用进出口跑过酷热的通往更衣室的道路,打开自己的衣柜锁,从工作服裤子里面抓出了硬币。100元的硬币33枚,还有一张500元的纸币。在这个宾馆打工到现在已经4个多月了,所有的客人都给小费,今天这还是第一次,而且都还不少。这样想后哲之注意到,肯正好保护着自己的身体,神通广大,是不是还要感谢客人们的心呢?
哲之所乘的出租车是辆个人出租车,无论如何司机很注意自己的买卖工具,把坐套和脚垫都弄得很干净,他就把自己便宜的脏鞋悄悄擦一擦,然后翻过来放到脚垫的一边。
“没关系,那样的鞋不擦也没关系。”
司机笑着说了。难道后视镜都照到脚下了吗?哲之想为什么司机会注意到我擦过鞋呢?他也没有问理由,就说:
“因为是那么脏的鞋,怕给你弄脏了。”
“不就是脚垫什么的吗,之后用水洗不就可以了吗?付了钱的乘客如果都那样思虑的话,这世上还怎么生存呢?”
“啊。”

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有两处翻译错误
1,そう考えると、哲之はあたかもキンが、自分の身を守るために、神通力を送って、客たちの心をあやつったのではないかろうという気さえしてきたのである。不应该翻译为感谢客人,是那个kin操纵着客人的心。
2,彼は自分の汚れた安物の靴をそっとぬいだ。そして靴を裏返し、マットの端に置いた。不是擦鞋,是脱鞋

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感谢

mumu110:你好!非常感谢你的来访。更感谢你给我指出错误。我要更认真一些,努力学习,提高水平。
欢迎您继续光临,继续支持,指正错误。

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