現在はともかく、過去には世界に冠たる「国際都市」として不動の地位を有していました。そこには色々な民族の歴史模様が織りなされており、複雑かつ独特の街であったことが窺えます。そして、「日本」も重要な役者でした。現在も往年の面影が色濃く残る街ですが、歴史を知ると、そこかしこの街角の建物からセピア色の浪漫が浮かび上がってきます。
現在、上海の歴史的建造物は大っぴらには整備されていません。しかし、歴史を知り、縁の建造物が現存していることを知れば、上海を観る目ががらっと変わり、現在の観光ツアーやガイドブックの観光スポットが何とも的外れなものにさえ思えてきます。
ここでは、”租界上海”の歴史を大ざっぱに、わかりやすく、皆さんにご紹介したいと思います。まず第1~3話では、歴史の「縦切り」、すなわち、時間軸に沿って歴史を概説します。続く第4話~8話では、「横切り」。すなわち、国際都市「上海」の主体者別にスポットをあてて概説します。そして、第9~11話では、日本人としては最も関心の深い部分。上海の歴史の大きな転換点となった戦争を概説します。最後の第12話では、戦前からの流れを受けた視点から戦後をまとめてみました。「おわり」には、参考文献を紹介しています。上海の歴史は奥が深いものです。ここに登場しない著名人もあまた上海に足跡を残しています。ご興味を持たれた方は是非ご一読ください。
歴史を知ると上海が何故騒がれたのかが見えてきます。そして私は、この歴史から「日本」という国が近代国際社会において為してきたことの意味を深く考えさせられました。
機会があれば、上海でその足跡を自分の目で見てみてください。
中尾 優
