紅楼夢が流行らない訳-
先日、『紅楼夢』はどうして日本の読者になじみが薄いのかというかねてからの疑問を記事に書いたら、皆様から色々コメントを寄せていただきました。よい勉強になりました。ご教示どうもありがとうございました。 ここで、友人の見解をご紹介します。 日本でも有名な中国文学作品のなかでは「三国志」「水滸伝」「西遊記」は男向け、「紅楼夢」は女向けという大ざっぱなわけ方ができそうですね。 「紅楼夢」が日本であまり人気のないのは、たぶん、おもしろさの種類のちがいの問題じゃないでしょうか。 わたしはけっこう好きなのですが、これは細切れ時間の楽しみとして読むのにはぴったりだったせいです。 長いからすぐには終わらないし、一度通読したらどこから読んでもよくて、日常とは隔絶したゴージャスな世界で、貴公子が憂い絶世の美女たちがためいきをつく。 自由に時間がとれない期間を楽しくすごすためには絶好の気分転換でした。 だけど、これはふつうのときに読むには「かったるい」ですよ。 やたら長いけど、血沸き肉踊るという興奮がなくて、だらだらつづいてて、衣食に贅を凝らして、どうやって暇をつぶすかの心配ばかりしてるような人たちの「ああ、どうしてわかってくれないの」みたいな話ばっかりで。「あほらし」となってしまいそう。 それに対して「西遊記」「三国志」「水滸伝」は興奮させられるようなストーリーでしょう。ああいうのは、夢中になって読みすすめてしまうものなのでは。 「ウルトラマン」のころから、男の子は天下国家の話が好きですよね。 「紅楼夢」は、「源氏物語」が好きな層(研究者は男が多いかもしれませんが、ふつうの人で源氏好きは圧倒的に女性では?)には受けるかもしれないけど、まず瀬戸内源氏とか谷崎源氏みたいに「××紅楼夢」として、もうちょっと読みやすくリライトしてくれる人が必要かもしれませんね。 ただ、「源氏物語」は光源氏の晩年まで書いてありますが、「紅楼夢」は宝玉がずいぶん若いうちに終わってしまう点はちょっと不利かもしれませんね。 「紅楼夢」は科挙に合格しただけで終わってしまうけど、任官してからの出世競争・左遷・まき返しみたいな部分もあるともっと幅広い層にアピールできたかも。 それから、一般的日本人にはちょっとわかりかねるのが、史太君への息子たちの服従ぶりかもしれません。お母さんを大事にするという範疇を越えていると、日本人的感覚では思えるでしょうね。このへんはむかしの日本の道徳観で「忠」を「孝」の上においていたってことに由来するのかな?

