朝日新聞社説26日
大気汚染訴訟―高裁の和解勧告を生かせ東京都内で道路の近くに住んだり、近くで働いたりして気管支ぜんそくなどに苦しんできた患者の救済が、大きな山場を迎えた。
患者が損害賠償と汚染物質の排出差し止めを求めた東京大気汚染訴訟の控訴審で、東京高裁が原告と被告の双方に和解を勧告した。被告は国と東京都、首都高速道路、自動車メーカー7社である。
その中で注目されたのは、自動車メーカーに解決金として12億円の支払いを求めたことだ。
解決金の支払いは患者が要求していた。一審でメーカーは責任を認められなかった。高裁がメーカーに解決金の支払いを求めたのは、法的責任はともかくとして、メーカーにも社会的な責任を負ってもらおうという強い意思の表れだろう。高裁の判断を評価したい。
解決金の額については患者とメーカーの主張の間に隔たりがあり、いずれも不満かもしれない。高裁も勧告で、「(双方に)苦渋の選択を迫るものであろう」と述べた。
ここは双方とも勧告を前向きに受け止めて、結論を出してもらいたい。
02年に東京地裁で言い渡された一審判決では、自動車の排ガスと健康被害の因果関係が認められた。しかし、賠償を命じられたのは、国などの道路管理者だけだった。大気汚染の元凶とされたディーゼル車のメーカーは「車の使用者が排ガスを出す主体であり、メーカーはその移動を制御できない」として責任を認められなかった。
控訴審が結審した昨年9月、東京高裁は双方に和解協議をうながした。
原告が示した3条件のうち、医療費助成制度は東京都が音頭を取り、国や首都高速道路、メーカーも協力を約束した。環境対策は国や東京都などが実行することになった。残された課題が解決金の支払いだった。
和解勧告について、患者側は「具体的に検討に入りたい」とだけ語った。要望してきた25億~30億円とは開きがある。すんなりと受け入れるわけにはいかないのだろう。患者の中で意見の違いが出てくるかもしれない。
メーカーも明確な態度は示さなかった。メーカーにすれば、そもそも一審では勝っている。ほかの地域でも同じような負担を求められたら、巨額になりかねないという心配もある。
一方で、この額なら支払ってもいい、という考えもメーカーから漏れてくる。環境対策はメーカーにとって避けて通れない課題であり、勧告を拒めば、企業イメージが悪くなるからだろう。
この訴訟は最初の提訴からすでに11年がたった。提訴は6次にわたり、原告は約630人になった。そのうち、すでに100人以上が亡くなっている。
患者もメーカーも高裁の和解勧告を生かす道を考えて、一日も早い解決を図ってもらいたい。
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