『結婚できない男』
…神様はこの世に男と女をお創りになった。悪魔がそれを夫婦にする。
社会の成熟に伴い晩婚化が進み、独身者が多くなっています。昔なら40歳を過ぎて独身だと変な目で見られましたが、今ではごく普通のこと。これは単に結婚だけの問題にとどまらず、少子化や、女性の進出による職場の変化などとも大きく関わっており、全ての日本人の関心事といっても過言ではありません。
このドラマは、独身だった主人公が結婚するまでを描く物語。ただし、結婚したい男が結婚というゴールにたどり着くという平凡な話ではありません。むしろ主人公は結婚なんかしたくないと思っているのです。
主人公?桑野信介は腕のいい建築家。その能力は評価され、仕事も多く人並み以上の収入を稼いでいます。しかし性格的には偏屈で独善的、そして皮肉屋。パッと見、女性を引きつけるものを持っているのですが、実際に付き合ってみると、女性は彼のキャラに辟易し、すぐに彼の元を去ってしまいます。
そんなことが何度も続くうちに信介は自分には恋愛も結婚も必要ないと思うようになり、持ち前の論理性で、恋愛や結婚の無意味さについて理論武装し、ことあるごとにその主張を繰り返します。ますます彼に寄りつく女性は少なくなり、彼は心の底で寂しさを感じつつ、表面はこれでいいんだという態度を貫き、どんどん彼の偏屈なキャラに磨きがかかっていきます。
ところが、そんな彼が一人の女性と出会います。この女性?早坂夏美は、それまで信介が会ったことのない、ある種の強さを持った女性です。信介のキャラと向き合っても、夏美は彼をすぐに否定はせず、かといって肯定もせず淡々と向き合う。信介は女性とのそんな関わり方は初めてで、戸惑います。そしてそれほど時間を経ずして彼女のことが気になって仕方がなくなります。しかし彼は素直にその気持ちを表現は出来ません。
それがきっかけとなって、膠着(こうちゃく)していた信介の人間関係がにぎやかに。
さらに数人の男女が関わり、恋愛模様が展開されます。信介の前にも、他の女性たちが現れます。そんな中で、信介と周囲の男女は、結婚とは何か、自分にとってどんな結婚が幸せなのかを模索していくことになります。そして信介を中心とした恋愛模様が展開していくというだけでなく、最終回に信介は結婚をします。しかしその相手が夏美なのか、それとも他の女性なのかは、視聴者にとって予想がつかない。登場人物のどの女性も、信介と結婚するかもしれないように見えてきます。視聴者は、「きっと、あの人と結婚するんだ」「いや、あの人かも」と思いながら、このドラマを楽しんでいくことになるのです。
出演/
阿部寛、夏川結衣、国仲涼子、塚本高史、尾美としのり、三浦理恵子、
さくら、高知東生、草笛光子、高島礼子ほか
プロデュース/安藤和久(関西テレビ)、東城祐司(MMJ)、伊藤達哉(MMJ)
演出/三宅喜重、小松隆志、植田尚
脚本/尾崎将也
制作/関西テレビ、メディア?ミックスジャパン
とあるマンションのキッチン。男の手がステーキを焼いている。スパイスの使い方や肉のフランベ。決して器用ではないが、ある種の美意識を感じさせる一連の動作。男は建築家?桑野信介(阿部寛)。出来上がった料理を一口ずつ満足げに味わっていると携帯電話が鳴った。信介の事務所の助手?英治(塚本高史)が、今夜のパーティーを忘れていること